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eoe後使徒化+女体化したシンジ(=碇レンorシオン)が別世界にトリップした設定のクロスネタがメインの二次創作サイトです。碇レン最愛で最強。クロス先のキャラとのCPが基本。 現時点で単品で取り扱いがあるのは深淵と鰤とrkrn。深淵と鰤は主人公総受け、rkrnはきり丸中心です。
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その1:ナタリア糾弾編


以前呟いてたチルドレンsの傍系王族ネタで、取りあえず原作流れで話が進んじゃった場合の瘴気中和会議乱入編。(最もちょこちょこルークの護衛として四人のうち誰かが入れ替わり立ち代り介入はしてたんで、ルークは原作ほど虐待されてません。・・・・けど、合流出来たのはユリアシティですかね。何となく。一応アスカとシンジha
将軍位貰ってますし、レイとカヲルはその補佐なので。軍務引継ぎとか色んな根回しとかで手が離せず、必至に追いかけたら崩落後でしたという感じで。)


ちょっと思いついたんで書いてみたその2です。
ので、物凄い中途半端に話が途切れてたりします。


*PT始めマルクトキムラスカダアト、加えてアッシュに特に厳し目。







 


 

「・・・・は?ふざけてんの?」

 



ローレライ教団の大聖堂に、冷え冷えとした嘲笑が響いた。

 

 


「さっきから黙って聞いてれば好き勝手にふざけた事ばっか言ってんじゃないわよ。 なぁんで、瘴気中和を、ルーク様とレプリカに押し付けなきゃなんないわけぇ?」


 

「瘴気中和は、レプリカルークにやらせるべきだ」と言ったジェイドに、悲痛に顔を歪めて口々に反論していたティア達や、決定を下そうとしていた王達の視線が、一つに集まる。そこには、最初に口火を切った女性が、勝気な美貌を激しい怒りに染めて一同を睨み据えていた。

その後ろには、蒼白な顔に淡い笑みを浮かべようとして失敗したように頬を歪めたルークが、驚愕の眼差しで自分を庇う女性を見上げていた。

 


「アス、カ?」

 


頼りなく弱まる語尾が、ルークの不安を如実に語る。
囁くような呼びかけに、内心の怒りをルークにだけは向けないように最大限努力しながら、激情に煌く青い瞳を僅かに和ませたアスカが少しだけ振り返って肯いて見せた。その一瞬の仕草だけで、ルークの緊張が緩やかに解けて、強張った掌から力が抜けた。痛ましげに主を見上げていたチーグルの子供が、緩んだ掌にルークの安堵を感じ取って、微かに鳴いた。


 

「あ、ミュウ、悪い。痛かったか?」


「大丈夫ですの!」


「そっか。」

 


ミュウの声に慌てて手の中に抱えていた青いチーグルを覗き込むルーク。だがミュウは明るく笑って否定する。此処にアスカ達が来たという事は、ルークが害される事など万に一つも無くなったのだと確信して心から安心して無邪気に笑った。

そんな微笑ましい一幕を、全く微笑ましい心境で見ることが出来ないティアたちは、忌々しげに表情を歪めて自分たちにとっての邪魔者に敵意を向けた。

 


「・・・・なんなのアスカ。行き成り口を挟まないで頂戴!今私達は大事な話し合いを・・・」


「ははは、大事な話し合い?」


「・・・・・話し合い。相談と同意義。つまり、ある問題について互いの意見や考えを交換し合う行為。 今交されていた内容は、一方的にルーク様とレプリカに瘴気中和の重責を押し付けるための高圧的な説得だけ。「話し合い」なんかではなかったわ。」

 



黙っていれば優美な、とも形容されるだろう美しい顔を、悪鬼の様に醜悪に歪ませてティアが金切り声を上げる。だがそのティアの言葉に答えたのは、いつの間にかルークを守るように立っていた3人の人影のうち、白銀の髪の青年と蒼銀の髪の女性だった。白銀の青年が朗らかに笑いながら、皮肉気な口調で吐き捨てれば、それを拾った蒼銀の女性が淡々と否定する。どちらも美しい微笑と優美な姿態で佇みながら、僅かの隙もなく周囲全てを警戒し、王達すら威圧するような鋭い殺気を振り撒いている。


 

「カヲル、レイ?!君達が口を挟む事じゃなだろう!
 しかも高圧的な説得、だなんてまるで俺たちが脅迫でもしてたみたいな言い草じゃないか!」


「なんなわけぇ?!行き成り!」


「やれやれ、何のつもりです。今事態は一刻を争うというのに、邪魔をするつもりですか」

 


ガイ、アニス、ジェイドも、ティア同様に嘲りを前面に押し出した表情で口々にカヲルとレイを睨みつける。黙っているが明らかに苛立ちを向けている周囲の王やその側近達の不穏な視線を感じぬはずも無いが、全く痛痒すら感じていないように振舞う乱入者三人。彼女達は視線すら交さずに一瞬で役割を分担して対抗姿勢を整えた。

最初から戦闘態勢をとっていたアスカは更に一歩前に出て威圧的に微笑み、カヲルは朗らかな笑みを浮かべたままアスカの半歩後ろで周りを警戒し、怯えるルークを宥めつつ守るように肩を抱くレイが一歩下がる。


そして。

 


「嫌ですね。まるで自分たちだけは、この緊急事態に最善を尽くしてる、って言ってるみたいです。 ・・・・やっている事は、寄って集って小さな子供に責任を押し付けて高みの見物決め込んでるだけの癖に、言う事だけ立派な金メッキが為されてますね。笑えるほどに醜悪でこっけいな無責任者ばかりが揃っているようで、情けなくて涙がでそうです。こんな人間ばっかりなら、世界が滅んでも自業自得じゃないでしょうか、・・ね?」

 



更に加わった新たな声が、優しく穏やかな口調に反して、激烈な皮肉を捲くし立てた。

 


「シンジ?!、いつの間に、」

 



その声に慌てて振り返ったルークが、大聖堂の扉に寄り添うように佇む黒髪の青年を呼ぶ。ルークの声に優しく笑い返しながら、足元に転がされていた荷物を軽々と抱えてアスカ達の元へ歩み寄る。
怜悧な美貌をゆるりと和ませたレイと、朗らかな笑みに本当の喜びを昇らせたカヲルに笑いかけ、アスカの隣まで進むシンジ。ちらり、と視線だけで遅刻を詰るアスカには苦笑を返して、乱雑に抱えた荷物を王達の前まで蹴り転がした。


 


「ルーク!?」


 

その荷物の正体を見たナタリアが悲鳴を上げる。

 



「何てこと、貴方、彼は本物のルークでしてよ!こんな乱暴な、ああ、ルーク今治して差し上げますからね。」


 


転がされた荷物--改め、暴走してレムの塔に行っていたはずの鮮血のアッシュを、駆け寄ったナタリアが抱き起こして治癒術を掛けている。


 


「・・・・し、シンジ、アレはやり過ぎ、じゃ」



「あ、申し訳ございませんルーク様。お見苦しいものをお見せして。
 でも大丈夫です。致命傷にはならない程度に手加減はしましたし・・・・ちょっと聞き分けないから、念入りに縛ってみたけど、見た目ほど怪我は重くないですから。」


「そ、そっか?でも」

 


その有様を見ていたルークが躊躇いがちにシンジに言うが、これ以上ないくらい良い笑顔で振り返ったシンジは即答する。後光が見えそうなほどの笑みだ。が、背景に浮かぶのは菩薩や仏ではなく、阿修羅や不動明王といった明らかな鬼神闘神の類である。現に、シンジの背負う空気を的確に悟った王の近衛たちは怯えたように身体を強張らせ、出来れば近づきたくない、という空気をまとって冷や汗を垂れ流している。


 

「そうですよ。そもそも、鮮血のアッシュは指名手配された大罪人なんですから、多少手荒に扱ったところで何の問題もありませんし。」


「そりゃそうよねぇ。なんたって、鮮血のアッシュ、といえばマルクト軍艦タルタロスの虐殺の実行犯の一人だし」

 


周囲の緊張など視界にも入れず、敵意の篭った視線になど気も払わずに、シンジが続ければ、わざとらしくアスカが続け。

 


「カイツールでは、ルーク様に行き成り奇襲した挙句、軍港を仲間に襲わせてキムラスカに甚大な被害を齎したテロリストだし」


「人質をとってルーク様をおびき寄せようとした誘拐犯。」


「ルーク様がアクゼリュスに向う道中でも敵意と殺意を向けてきた和平妨害と王族殺害未遂の大逆犯。何でもルーク様の身体を操って、同行者に剣を向けさせた事もあるそうですね。そんな悪逆非道な卑怯者など、見たことありませんよ。本当に、何処まで落ちぶれれば気が済むんですかね?」


 

カヲルが明るく引き継ぎ、レイは淡々と言葉を添え、最後にシンジがやっぱり明るく笑って言い切る。
途中何度も口を挟もうとしてその接ぎ穂が見つからなかったティアやナタリアが悔しげに顔を歪める傍らで、段々とアッシュの立場を思い返し始めた施政者たちが表情を曇らせる。こんな簡単な事実認識も改めて言葉にされなければ出来ないのか、とアスカが侮蔑の視線で伺っていることにも気づかずに、互いに目を見交わしあっている施政者達。

 



「そ、それはルークにも事情があって!!」


「どんな事情があろうとキムラスカには関係ないでしょうナタリア殿下。
 貴方がルークと呼ぶその男は、神託の盾騎士団で特務師団長を務める鮮血のアッシュです。
 他国の軍人が犯した犯罪行為を、どうしてキムラスカ側が庇ってやる必要があるんです?
 ・・・ああ、もし万が一、アッシュが隠された高貴な身分の人間だとして・・・・公式に認められていない以上、考慮する必要などありませんよ。


 ・・・・それとも、インゴベルト陛下。まさか!とは思いますけど、自らの意思で神託の盾騎士団に所属している鮮血のアッシュを、本人の自己申告の通りに、 ファブレ公爵家の嫡子として認める、なんてことなさいませんよね?」


 

施政者達の顔色には気づかないまま、声を張り上げるナタリアに、シンジは小さな子供に言い聞かせるような声で穏やかに答え、ちらり、とインゴベルトを見上げて問いかける。否定は許さない、と語る深紅の瞳に逆らえないインゴベルトは力なく肯くしかない。



「お父様?!」



ナタリアが悲鳴を上げるが、冷静に考えれば当然である。


物陰に潜んで無防備状態のルークに頭上から斬りかかる行為も、アリエッタに命令してカイツール軍港を壊滅させ人質を取る行為も、同調フォンスロットとやらを使ってルークの身体を操る行為も、どれをとっても卑劣極まりない唾棄すべき醜悪な行為である。そこまで卑怯な手段でルークを害そうと付けねらっていた男が、正当なファブレの嫡子でキムラスカの第三位王位継承者。

・・・・・信じたくない話しだし、信じるしかない様な証拠があったとしても、公に信じたと認めることは出来ない話だ。


最低限の常識を持ち合わせているならば、アッシュの存在を斬り捨てるしかキムラスカに道はないと理解できる。


が、理解できない愚か者も居たりする。

・・・・いわずと知れた、ティア以下の元ルークの(不本意極まりない)同行者達である。


 

 

「そーだよ!大体今は関係ないじゃん!」



「はっ!関係ないぃ?笑わせるわね、アニス・タトリン。
 どれ程時間がたとうと犯罪者は犯罪者でしょうが!目の前に居たなら捕縛するのが当然でしょ?軍人の癖に、その程度のことも理解出てないわけ?だとしたら、神託の盾騎士団の質も知れたもんよねぇ?」

 

 

最初に無駄に元気良く食って掛ったのはアニスだ。対するアスカは、そんな罵声に表情一つ動かさず、嘲笑交じりに斬り捨てる。

 


「な!?本当に傲慢で失礼な人たちね!!これだから貴族は、」


「・・・・僕達が貴族階級の人間だって理解したうえで、その発言。
・・・本気で常識を知らないんだね。これは神託の盾騎士団の教育精度疑われても仕方ないと思うなぁ。身分階級に応じた礼儀作法なんて、軍人として働く上での初歩の初歩じゃないか。しかも君、軍人としての階級も下から数えた方が早い程度の下級兵士の癖に、他国民とはいえ、仮にも将軍位を貰ってる僕らに反論とか・・・導師守護役と主席総長の妹が揃いも揃ってこの言動じゃあねぇ。」
 

 

ついで金切り声を上げたティアには、穏やかな笑みを浮かべたシンジが、またもや表情には似合わない皮肉を吐いて周囲を慄かせている。

・・・・普段は何処までも優しく穏やかな人柄だが、激怒すると性格が豹変するシンジの事を知り尽くした身内組は冷静に己の敵を見定めて事態を観察している。が、そんなシンジの内実を知らない周囲は動揺と恐怖で顔色すら繕えない状態だ。・・特に、不本意ながらその能力の程を痛感させられているキムラスカ重鎮組は既に顔が土気色だ。今まで、預言に懐疑的な発言を隠さず堂々と軍内に勢力を伸ばし続けるシンジ一党を排除しようとして返り討ちに合い続けた経緯を思い起こしてしまえば当然である。幾ら王族の血を引くとはいっても所詮は若輩者よ、と侮ったが為に容赦のない反撃によって滅ぼされたインゴベルトやクリムゾンの側近連の末路は惨めの一言に尽きた。
 

今現在の王家に、シンジらを忌々しく思いながらも侮るような愚か者も、正面きって敵対しようとする無謀なものも存在しない。


・・・たった一人を除いて。

 


「なんて事!!貴方方、アニスとティアを侮辱するのも大概になさいませ!!
 しかも、ルークにこのような狼藉を働いておいて、なんてふてぶてしい!!」


「ははは、そのお言葉、そっくりお返ししますよナタリア様。
 侮辱だなんて、本気で仰ってるんですか?だったら、キムラスカ王家の教育担当者の能力も疑わざるを得ませんね。まさか、王女として国で最も高い教育を受けたはずのナタリア様が、そこの神託の盾騎士団兵士の罪を理解できないなんて、笑えない冗談ですね?」

 

朗らかに言い切るカヲル。常に浮かべられたアルカイックスマイルも眩しく白皙の美貌は言葉の内容を無視できれば誰もが見惚れる秀麗さ。

が、真紅の瞳には微塵の笑みも浮かんでいない。白銀の髪を揺らして業とらしく肩を竦めたカヲルの視線には侮蔑しか浮かんでおらず、真正面からそれを向けられたナタリアは反射的な恐怖に唇を慄かせた。しかし、(無駄に)気丈なナタリアは、そこで口を噤めば良いものを更に反論を試みた。背後から止めようとしたインゴベルトの表情に気づいていればまだ救いはあった(かもしれない)のに。


 

「無礼者!!私を誰だと思ってますの?!ルークへの狼藉に加えて、キムラスカの王女である私に向かっての侮辱。 もう許せませんわ!!誰か、この不埒者たちを捕らえなさい!!」


 

王女として、命ずる事に慣れた声は、大聖堂に良く響いた。
だが、それに答えるはずの兵たちの応えはない。
一瞬不自然な沈黙が落ちて、怒りに煌くナタリアの視線が、動揺と焦燥と疑問を乗せて控えているはずのキムラスカ兵士に向かう。


 

「何をしてますの!!早くそのもの達を捕らえなさい。ナタリア・ルツ・キムラスカの命令です!!」




「・・・・今更何を言ってるんです?ナタリア様は、自ら王籍を返上なさったじゃないですか。王籍をお持ちでない貴方は、現在インゴベルト陛下のご息女、という身分しかありません。陛下の護衛を勤める近衛の方々に命令する権利などあるわけ無いでしょう。」

「な、なにを無礼な!!」

「カヲル?」


裏返った声でカヲルを睨み据えるナタリア。だがカヲルは一顧だにせず、不安げな表情で袖を引くルークに視線を合わせて微笑む。



「あ、そうですね、失礼しましたルーク様。
 ルーク様がアクゼリュスまでの道中で送ってくださった報告書から、ナタリア様の申告を受けまして、後日領事館等で確認したところ、ご本人のお言葉も賜りましたので、手続きを遂行し、先日無事にナタリア様の王籍返上
が完了しました。ご報告が遅れまして申し訳ございません。」


「貴方達、それはどういうことなの?!」


朗らかなカヲルの言葉が終わらぬうちに金切り声で問いただそうとするのはティアだ。



「何言っちゃってんの?!大体そのお坊ちゃんの報告書なんて信用できるわけ無いじゃん!!」



ついでアニスが馬鹿に仕切った表情でルークを睨みつけ。


「お、おいおい、カヲルまで。・・・・なんでそんなことするんだ?!」


まるで不当に貶められる被害者を庇う善人のような表情で一行の前に進み出たガイ。


「・・・・・・どこまでも卑怯な・・・・そうまでして、私達を陥れたいんですか・・・」



淡々と呟きながらも、紅い瞳に物騒な光を浮かべたジェイド。
カヲルは常と同じアルカイックスマイルで食って掛る五人を見渡して、同じ言葉を繰り返した。



「・・・・・・何度も同じ事を言わせないでくれないか。ナタリア様は、自ら王籍を返上なさいました。その手続きも無事完了して、今はただのインゴベルト陛下のご息女という身分しかお持ちではありません。・・・・ここまで噛み砕いて言ってるのに、理解できないのかい?」


「・・・そ、それはどういうことかと聞いているのです!!」

「どういうもなにも、ナタリア様が仰ったんでしょう?危ないからアクゼリュスには連れて行けない、と仰ったルーク様にむかって、「自分を王女として扱うな」と。・・・・つまり、王女としての権利身分を返上する、という意味ですよね?念のため後日領事にも確認させたはずですが。その時もナタリア様は否定なさらなかった。むしろ、救助に行く一員としてのみ自分を扱うように念を押されたと報告を受けております。」

「な、そ、それは、私はアクゼリュスの救助のために!!」



狼狽しきったナタリアが必死に聞くが、カヲルは勿論アスカもシンジもレイも表情を変えない。四人が四人とも、何を当たり前のことを、と言いたげな平然とした態度だ。そこで、彼ら相手では埒が明かない、と背後のインゴベルトに視線を向けたナタリアだが、救いを求めた己の行為に更に追い詰められることになった。



「お父様!!」


「・・・・なんじゃ、ナタリア。」

「何ではなく、この者たちの無礼な発言を放っておきますの?!」

「無礼も何も、事実であろう。・・・・・王籍返還の書類に決済印を押したのはわしじゃ。」

「なぜ?!」

「それはわしの言葉だな。・・・・王籍返還など、何を愚かな、と思ったが、お前は自分が世界を救うのだと息巻いていたから、その覚悟の表れかと思うておったに・・・・・・自分の発言の意味にも気づいておらんかったのか・・・・」

「気づくも何も、私は王籍を返上するなど一言も言ってません!!」

「言っただろう。ルーク達を待ち伏せして、同行を受け入れるように強要した時に、「王女として扱うな」?だと?・・・・ナタリア、王族は生まれた瞬間から、民の血税で養われておるのだ。故に、民が暮らす国の為に働くのはその代償で義務でもある。にも関わらず、例え一時であっても、「王女として扱うな」とはどういうつもりだ!!お前は自らの意思で、「王女」を捨てたのだ!!今更見苦しく抗うのは止めよ!!」






例え預言に傾倒し、他国の大詠士などに良いように操られるような暗主であろうと一国の王である。方法と手段が愚か極まりない、とシンジ達に辛らつな評価を受けていようと、どんな形であれキムラスカの繁栄を実現させようと心血を注いでいたことは事実だ。それは、インゴベルトもインゴベルトなりの方法で、キムラスカを愛し守ろうとした結果なのだ。

そうやって、今までの半生を、国を守ろうと力を尽くして生きてきた王の言葉の重みは、自分の言葉の責任一つ取れないお姫様を萎縮させるに十分すぎた。悲痛に顔を歪めたナタリアを見下ろしたインゴベルトは、そんな娘の浅慮な行為と無自覚ゆえの現状を思い返して今更すぎる後悔の溜息を吐いた。・・・・・・これは、シンジ達が怒り心頭で行動を過激に推し進めた理由も知れようと言うものだ。一番の理由は、シンジ達が愛しんでいるレプリカルークを守るためだろうが・・・・・・それ以外の理由も同じくらいに、彼らの怒りを煽っているのだろう、と項垂れた。


「貴方達、本当に最低ね!!そんな犯罪者を守るために、自国の王女を陥れるなんて!!」

「なんでナタリアが王女様の身分なくさなくちゃならないわけぇ?!」



そして引きつづき空気の読めない罵声が響いた。



「・・・・・そこまで言い張るなら、ナタリア様の自己申告、だけは無かった事にしてもいいわ」

「当たり前だ!!ナタリアの王籍を抹消するなんて、」



そこで、今まで殆ど無言で事態を見守っていたレイが呟いた。淡々と抑揚のなく落されたレイの言葉に、ガイが憤慨しつつ同意する。ティアとアニスも勝ち誇った顔をして、カヲルやシンジを睨んでいる。だが、当のカヲルはあきれ返った表情で肩を竦めた。


「ふぅん?どうしてもそうしたいなら、好きにすれば良いんじゃないかい?・・・・・・折角の温情措置だったのに、棒に振りたいって言うのなら、ねぇ?」

「はぁ?!」

「温情ですって?!何をいってるの?」



そして続けられたカヲルの言葉に、更に顔を歪めたアニスとティアが更に声高に言い募ろうとする。

 

「どういうもこういうも、当然だろう?ナタリア様は、正式な謁見の場で、直々にインゴベルト陛下から下された命--「アクゼリュスへの同行を禁ずる」という命令に逆らったんだから。例え王女だろうと、国王陛下の命令に逆らうなんて許されるはず無いじゃないか。いや、王女だからこそ、国民全ての規範と成るべく、より一層国王陛下への恭順の意を示すべきだろう。

にも拘らず、まさか護衛や部屋付きのメイドを出し抜いて勝手に城を抜け出して?しかも予め予定されていた公務はすべて放棄して?同行を拒否した親善大使に、脅迫!!なんてしでかして?

・・・・どれ一つとっても許されざる行為だね。」

「けど、ナタリアはアクゼリュスを救おうとしただけじゃない!!」


ナタリアの問題行動を羅列するカヲルにはティアが食って掛る。
それに答えたのはレイだ。

 

「本気でアクゼリュスに着いて行きたかったなら、ナタリア様は脱走なんかする前に、陛下を説得するべきだった。どれほど納得できない内容であっても、「国王の命令」に背くなんて絶対に許されない。・・・・・どんな理由があっても、国王の言葉に逆らったと周囲に判断されたら反逆者として処断されるわ。これは、キムラスカ法典にも明文化された規定に拠る判断よ。」

「そんなの酷いよ!!」

 

淡々と反逆の定義を語るレイにはアニスが反論するが、レイの言葉の内容を欠片も理解していない感情論だ。


 

「何が酷いのか理解できないわ。
 そもそも、救出の為の部隊を編成して、その責任者としてルーク様が親善大使として赴かれる事は決定していた。そこに、ナタリア様がわざわざ加わる意味は無い筈よ。」

「だから治癒術が」

「瘴気障害に・・・・というか、体調不良に治癒術は殆ど効果が無いのに?」

「え、」

「治癒術士なら知っていて当然の基礎知識だね。しかも瘴気障害の人達の救援方法に治癒術なんて殆ど役に立たないと、少し考えればわかることだし。」


レイの言葉に反撃しようとしたティアにはカヲルが言う。
呆けた声で見上げてくるティアにむかって、上辺だけは朗らかに告げた。
途端その事実を思い出したのか顔を紅くそめるティア。


「君らも既に知ってるはずのことだろう。ルーク様からお聞きした最初の旅路の事だよ。なんでも妖獣のアリエッタに襲撃された時噴出した瘴気から身を守るために、譜歌を使って瘴気を弾く結界を張ったそうじゃないか。・・・・瘴気への対抗策は、瘴気に触れない清浄な空間に避難することが第一であると、君らは既に知っていたわけだ。ユリアシティの設備もその為の装置だし。」


「つまり、アクゼリュスの人たちを救助したいなら、まず彼らを瘴気の及ばない遠方へと連れて行くことが最優先。」

「瘴気障害やなんかの治療はその後だね。瘴気が湧き出しているという現地で治療したって、また瘴気障害に罹るだけだもの。そんな事、少し考えれば誰だって思いつく簡単な答だよ。・・・・・ねぇ?」



カヲルとレイの言葉が進むにつれて、自分達の救助活動がどんなものだったか思い出したらしいアニス」ジェイド・ガイの三人が顔色を悪くする。反論できない悔しさはわかりやすいほどだが、矛先になるのは避けたいらしく唇をかんで俯いている。その三人の様子を見比べたピオニーがこめかみに手をやって眉間に皺を寄せる姿を横目で見たカヲルが笑みを深めて言い切った。



「つまり、ナタリア様が個人として救援に赴いたところで何の役にも立たないって事だね。・・・・・反逆してまでルーク様についていったのにねぇ」


ナタリア所か治癒術士として救援に貢献したと思い込んでいたティアも流石に黙り込む。


「で、話を戻すけど、結局救援の為に有益な役割など持ってないにも関わらず、反逆してまでアクゼリュスに赴かれたナタリア様の自己申告による王籍返上の取り消しについてだけど・・・・・もしも、ルーク様がご出立なされた日に自己申告があったとして処理しておけば、ナタリア様の出奔と公務の放棄は、王籍を返上した一国民のナタリア様が城から居を移される為に業務が停滞してしまったという体裁が採れるんですよ。更にアクゼリュスに向かった件も、一国民として親善大使の護衛を引き受けたなりなんなり理由を付けて誤魔化せなくもない。」


「王籍返上の申告の件を取り消したなら、勿論城からの出奔も公務の放棄も、王女としての義務を果たさなかったと処罰の対象になるわ。勿論一番重いのは陛下のお言葉に逆らってアクゼリュスに赴こうとした事だけれど」

「それは可哀想だとルーク様が仰ってねぇ・・・・・だったらまあ、最低限処刑だけは免れるように手続きをとろう、とした結果なのだけど」


朗らかなカヲルと、淡々としたレイの説明に、ティア達も反論できない。ここで反論して、本当にナタリアからの自己申告を取り消されたら、ナタリアが処刑されるかも、とまで聞けば口をつぐんで無理にでも納得するしかない、程度の理解だろうが、取りあえずは黙ったのでよしとする。悔しげな表情から反省の意は伺えないが、まあ良い。

そして、シンジ達とルークが視線を集中させた先で、ナタリアは。


「・・・・わかり、ましたわ。」


蒼白な顔で、ポツリと一言呟くと脱力したように床に突っ伏した。







 

 

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