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eoe後使徒化+女体化したシンジ(=碇レンorシオン)が別世界にトリップした設定のクロスネタがメインの二次創作サイトです。碇レン最愛で最強。クロス先のキャラとのCPが基本。 現時点で単品で取り扱いがあるのは深淵と鰤とrkrn。深淵と鰤は主人公総受け、rkrnはきり丸中心です。
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突然思いつきました、な小話。

本館連載『虹の麓の物語』設定で、キラとレンの兄妹が、反逆世界でブリタニア皇族だった場合。

ルルーシュがマリアンヌ死後皇帝に謁見してる場面。

キラとレンの毒舌全開。

黒幕組みにも捏造有り。



 

 

 

 

 


「母が、身罷りました」

 

 

荘厳なブリタニア宮殿の謁見の間に、少年の声が響いた。
漆黒の髪に深い紫色の瞳が、居並ぶ皇族達の中でも一際鮮やかだった。


平民から帝国最高峰の騎士であるナイトオブラウンズにまで上り詰めた閃光のマリアンヌが産んだ、第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。更に年嵩の兄姉たちを押しのけて、第17位の継承権を与えられていた皇子。


そのルルーシュが、母譲りの美貌を憤りに歪めて、遥か高みから見下ろす父帝を睨みつける。兄弟姉妹の中でも抜きん出て色濃く受け継がれたロイヤル・・パープルに浮かべられるのは激烈な怒りの感情だ。声変わり前の幼い声には、失望と悲しみと憤りが込められて、畏怖と敬意の対象であった父を責めている。
 

なぜ、母を、守らなかったのか。
襲撃に巻き込まれた妹を守ってくれないのか、と。


ルルーシュは、母を妹を守れなかった父に失望しながらも、それでも何処かでまだ信じていたのだ。巨大な帝国の最高権力者である皇帝で、直接話しかけることすら滅多に許されぬくらいに遠い存在であったとしても、自分と彼は親子であるのだと。
 

ならば、せめて生存した妹への労わりの言葉くらいはくれるのではないか。
母の死を、せめて悲しんでくれるのではないか、と。


だから、荒れる感情に揺れる声で言い募った。
普段なら緊張で萎縮してしまいそうな数多の視線に晒されながら、轟然と顔を上げて真っ直ぐ玉座に座る男を見上げて。母が居なくなってしまった悲しみと不安に負けてしまいそうな身体を必死に押さえつけて。

 


「皇帝なら守れたはずです!ナナリーの見舞いにさえ一度も…」

 



守ることは、皇帝の義務だったはずだ。
例え100人を超す妃全てを常に意識に留める事が叶わずとも、彼はこの宮殿の主だったのだから。
己の治める国を、住まう場所を守る責任を負った者を、皇帝と呼ぶのだと、そう考えていたルルーシュは声高に言う。


だが、皇帝の答えは、そんなルルーシュの思考を打ち砕くに十分な冷酷な言葉のみだった。

 


「そんな弱者に用はない」

 



玉座から見れば人形ほどにしか見えぬ小さな皇子を眺める視線には、なんの感情も浮かんでいない。威厳に満ちた皇帝の声には、一欠けらのぬくもりも存在しなかった。
 

耳に届いた皇帝の言葉に愕然と動きを止めたルルーシュが、呆けたように聞き返した。

 

 


「弱者?」


「それが皇族というものだ」

 


父の、皇帝の、余りに情のない発言に、衝撃を受けながらも、ルルーシュの、第二皇子シュナイゼルをして優秀なと言わしめた明晰な頭脳は冷静に相手の意図を読み取った。


成る程、皇族であるならば己が身は己で守って当然。
守れ無かったならば大人しく死んで行け、とそういうことか。
死んだものは所詮その程度の存在であったと、省みる必要もないと。


周りに居並ぶ皇族や貴族達も特別な反応を見せないところをみると、この皇帝の発言の内容は別段特殊なものではないのだ。つまり、今更衝撃を受ける自分こそが、この場では異端であるという証左に他ならない。ふつふつと湧き上がる感情がルルーシュの全身を焼き尽くすかのようだ。
 

それでもまだその感情は怒りだけだったのだ。その時は。


血の繋がりを盲目に信じて、皇帝を頼ろうとした自分自身への憤りに背を押されて毅然と言い捨てる。皇帝の言葉が、この国の皇族のあり方であるというのなら、自分はそんな世界に居たくない、と。

 
 

「なら僕は…皇位継承権なんていりません!
  貴方の後を継ぐのも争いに巻き込まれるのももう沢山です!」

 



何より、大事な家族であり最大の庇護者であった母が居ない状態で、皇族としてここに残る危険性にも思考が及んで、この答が今の自分の最善だと判断した。弱肉強食、が皇族としての規範でいうといのなら、例え多少親しいとしても、他の兄や姉に頼ることも出来ないのだろうと一瞬で答を弾き出す。
ブリタニアの宮殿で情や血縁を信じる愚かさを、この数分の会話で理解したルルーシュは、迷わなかった。

だが次いで返された皇帝の言葉には、流石に思考が停止する。

 

 

「死んでおる…」

「え…?」

「お前は生まれた時から死んでおるのだ」

 


身の内を焼いた怒りすら忘れて、呆然と玉座を見上げる。
降りてくる視線に浮かぶのが、強烈な侮蔑だと理解して、背筋を這い上がった恐怖に肩を戦かせた。

 


「お前は生きた事が一度もないのだ!しかるになんたる愚かしさ!」

 


まるで、誤って踏み潰してしまった蟻を靴から払い落とすかのような目で見下される。皇帝にとって、自分は正しく虫けら同然の存在なのだと、強烈に知らしめる無機質な視線がルルーシュを縛り付けた。

 
 

「死んでおるお前に権利などない!ナナリーと共に日本へ渡れ。皇子と皇女なら良い取り引き材料だ!」

 


ルルーシュの全身が熱くなる。最初に感じた怒りがふつふつと煮えたぎる。背筋を這った恐怖故の悪寒が、消える。代わりに生まれたのは、紛れもない憎悪。母を見捨てたばかりか、今度は妹までも捨てようとする皇帝への憎しみが、視界を赤く染める。震えそうになる手を強く握り締めて、苛烈な光を浮かべた瞳を再び玉座に向けた時、新たな声が加わった。 

 




「わあ、随分なお言葉ですね皇帝陛下?まるでご自分は違うとでも言ってるみたいです。
 だとしたら随分とご自分には甘いことですね。仮にも国の最高権力者がそんな無責任な発言は止めた方が宜しいですよ。」

 

 

 

衣擦れすら憚られるような空気の中に、場違いなまでに穏やかな声が響く。
しかし声音の穏やかさに反して、内容は激烈な皮肉だった。これ程に堂々と皇帝を揶揄する言葉など聞いたことがない。今まさに爆発しそうだった憎悪すら忘れて、ルルーシュは発言者を見つめた。周り中の誰もが唖然としてて発言の主に集中させる。
その先で、発言者である樺茶色の髪の青年は、菫色の瞳を小さな弟に向けて柔らかく微笑んでいる。皇帝に向かって言葉を発したというのに、視線は向けないというこの上ない不敬を働きながら、全く気にすることなく足を踏み出してルルーシュの前に出る。そして、事態の展開についていけないルルーシュを背に庇った青年は言葉を続けた。

 
 

「突然の発言、大変失礼いたしました。第9皇子、キラ・ユラ・ブリタニアでございます。」


「無礼者め。何の積りだ」



青年、・・キラは、皇帝の威圧にもその態度を崩さず柔らかく微笑んだまま言葉を続けた。
しかも、許可無く発言したことへの謝罪はあったが、言葉の内容への訂正も弁明もない。
それで居て表情も態度も全く変わらずいることに、ルルーシュは先ほどの皇帝の発言以上の衝撃を受けて、呆然と兄の背中を見上げた。

 
 

「いえ、陛下があんまり可笑しな発言をなさるものですからつい。というか、昨夜母を亡くされたばかりのルルーシュ殿下に、その物言いは例え弱肉強食を掲げるブリタニアの皇帝と言えども、人間性を疑いますよ?」

 
 

今度こそ謁見の場が硬直する。今まで、ブリタニアの最高権力者であり最大の強者である皇帝に、そこまで明け透けに侮辱の言葉を投げたものなど存在しなかった。ルルーシュを見下していた皇族たちも、あからさまに顔を強張らせてキラを見つめる。



そこで更に発言者が増える。



「恐れながら、皇帝陛下。私も申し上げたいことがございます。発言の許可を頂きたく」

 


部屋中の視線が移った先には、先ほどキラが立っていた場所の隣。黒髪に深紅の瞳の少女が、やはり穏やかに微笑んで立っていた。

 


「よかろう。いいたい事があるなら言うが良い」

 


皇帝はぞんざいに手を振って許可を出す。キラの先ほどの発言に怒りを覚えた様子も無ければ、少女の許可を求める言葉に何ら感情を動かした様子もない。ただ、言葉どおり、好きにすればいい、という意図しか感じられたない仕草だった。だが、その無関心さにこそ居並ぶもの達は愕然とした。今まで、表立って楯突くものは確かに居なかったが、皇帝の不興をかって闇から闇へと葬られた愚か者達の末路を知る者も多い。皇帝が絶対の支配者であるブリタニアで、このような態度をとるなど、命が要らないとしか思えないが、感じるのは愚かさへの嘲笑よりも、信じ難い光景への得体の知れない恐怖でしかなかった。

 



「ありがとうございます。では、第3皇女レン・ユラ・ブリタニア。御前失礼いたします」



そんな周囲に気づかぬはずもないのに、少女は穏やかに微笑んだまま進み出て、キラと同様にルルーシュを庇う位置に立つ。そして、言った。

 


「恐れながら、陛下。先ほどのルルーシュ殿下へのお言葉ですが、私も可笑しいと思います。」


「そうですね。先ほど陛下は亡くなられたマリアンヌ妃殿下を弱者と仰いましたが、マリアンヌ様が弱者ならば、陛下も弱者ですね」


「何だと?」

 


レンとキラが微笑んだまま言い切った。その言葉に、初めて表情を動かした皇帝が聞き返す。

 


「マリアンヌ様が弱者だと仰るなら、己の妻一人満足に守ることも出来なかった陛下ご自身も弱者のお一人だと申し上げました。


だってそうでしょう。確かに生きているだけで数多の害意を向けられる可能性を持つのは、私達皇族の宿命でもあります。だから自衛手段を講じておくのは義務です。ですが、それ以上に陛下はこの宮殿の主で最高責任者であらせられる。つまり、この宮殿の安全確保は、陛下の責任で行われるべき責務ではありませんか。
それを怠ったのです。今回の事件は、陛下の怠慢の結果でしょう。


責任者の存在意義をご存知ですか?責任者とは、有事の際に、責任を負うために存在するんですよ?にも拘らず、己の義務を放棄したことを横において、マリアンヌさまとルルーシュ殿下だけを責め立てるなんて・・・・八つ当たりはお止めください。見苦しいです。」

 
 

皇帝の、苛立ちを示す声音に怯みもせずに、つらつらとレンが捲くし立てる。
ルルーシュと大して年の変わらない幼い少女が、優しげな面持ちで微笑みながら口にするような台詞ではない。まるで皇帝が無知な子供ででもあるかのような口調で、諭すように口にする内容は、穏やかな口調に反して痛烈な皮肉を含んでいた。

次いでキラが口にする台詞は更に輪を掛けて皇帝への侮蔑まで上乗せされていたが。

 


「皇妃のお一人が、よりにもよってテロリストの手にかかって身罷られるなんて。
 しかも、離宮で?・・・ 妃殿下の離宮が、何処にあるかご存知ですか?宮殿敷地の最奥ですよ? そんな場所にまで、テロリストの侵入を許す。その程度の警備しか用意できない人間が、この国の最高責任者。

・・・とても、面白い冗談ですね。
 

妃殿下の住まわれる離宮がどんな場所かも理解していらっしゃらないのでしょうか。ご自分も足を運ばれる場所で、テロリストが、ご自分の細君を手にかけたんですよ。次は自分かもしれない、程度の想像も出来ないんですか?
 

・・・・それとも、絶対に、そうはならない確証でもあるから、そんな、マリアンヌさまとルルーシュ殿下だけを責めるお言葉を?」

 


笑ったまま言い切った。
笑ったまま・・・・だが、キラの菫色の瞳には、欠片の笑みも浮かんでいない。
鋭い視線で皇帝を見据えている。ここで初めて皇帝が身じろいだ。まるで動揺を隠すかのような仕草だ、とルルーシュは思った。


何故、動揺する必要が、・・・まさか、本当にキラの言葉の様に、事件の真相を知っていると?


はっとしたルルーシュが、キラとレンの隙間から改めて皇帝を見上げた。

 



「・・・・・言いたいことは、それだけか」

 



だが次の瞬間には元の通りの皇帝の表情に戻っていた。厳格で威圧的で、冷酷な、須らく全ての者は己に隷属する虫けらとでも考えているような無機質な瞳。誰もが畏怖して身動きすらも出来ずに固まる謁見の間で、ルルーシュを庇った兄妹だけは変わらず笑う。
 

この場の支配者は、間違いなくこの二人のほうだった。

 



「「まさか!」」



朗らかに声が揃う。

 


「まだまだ一杯ありますよ。折角ですから全部言っても宜しいですか?」

 


可愛らしく小首を傾げたレンが言えば。

 


「ご冗談を。都合の悪い事を聞いたからって、無理に威圧するのはみっともないです。器の底が知れますよ?」

 



穏やかな口調で微笑んだままキラが、困ったように眉尻を下げる。


もうこの場で首を落とされないのが不思議なくらいの不敬の連続である。
周囲に居並ぶもの達は、無礼な兄妹への怒りや嘲笑よりも、この恐ろしいやり取りを直に見続けなければならない不幸なわが身を守るための思考で手一杯だ。


だから、誰もが疑問を抱く余裕を持っていなかった。
皇帝への忠誠の厚さにおいて比類なき騎士である、ナイト・オブ・ワン始めラウンズの面々が、主君への無礼に対する憤りよりも、兄妹への警戒と緊張を露にしていたこと。皇帝が、兄妹の発言に苛立ちを浮かべるよりも、二人の態度への疑問と警戒を持って慎重に言葉を選んでいたことを。

 
 

「くだらん。」

 


だが、誰かがそれに気づくよりも早く、皇帝は己の指針を定めたようだ。

 


「それ程に言うのだ。覚悟はあろうな。」

 


殊更口調を強めて、ルルーシュ含んだ三人を見下ろして言う。
やはり、表情も態度も変えないキラとレンを見て、一瞬だけ間を置くが、言葉を続けた。

 


「・・・・よかろう。お前達もルルーシュ達と共に日本へ行くが良い!
 精精彼の国との取引で役に立ってもらおうか」

 


「それは!」



ここで慌てたのはルルーシュである。父にも兄弟姉妹にも期待が持てないと思い知らされた瞬間に、差し伸べられた二人の言葉は純粋に嬉しかった。誰もが弱者と斬り捨てたマリアンヌの死と母を亡くしたルルーシュを気遣ってくれたのだ。陛下への発言の内容はショックを受けていたルルーシュすら躊躇うくらいに容赦のない抗議だったが、その切欠は自分を庇うためである。そんな二人まで人身御供にされるとしって、黙っていられるルルーシュではない。焦りに焦って抗議しようとした。

 
 

「まあ、仕方がないですね。では御前失礼いたします。」

 


だが、そんなルルーシュをレンがそっと止めた。焦燥の浮かんだ瞳を向けるルルーシュに微笑みかけるレンの横で、キラが仕草だけは優雅に皇帝への礼をとって退室の挨拶をしている。

 
 

「承知いたしました。では、私も御前失礼いたします。」

 


そして立ち上がったキラにルルーシュを預けると、レンも同様に挨拶をしてさっさと踵を返す。探るような視線を向ける皇帝に興味を見せず振り返った先でルルーシュを宥めながら歩くキラに追いつこうと足を踏み出した。

 



「・・・・・愚か者共め!」

 


はき捨てられた皇帝の言葉が耳朶を打ったが、レンは微笑んで扉を潜る。

 


「(・・・・・お互い様です)」

 


レンは内心でだけ答を返して、謁見の間を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「・・・・・じゃ、そういうことで、ルルーシュ殿下、これからよろしくお願いしますね?」


「レン義姉上!」


「僕もよろしく。早速ナナリー殿下にも挨拶しに行って良いかな。これから一緒に日本に行く仲間だし」


「キラ義兄上!」

 


呑気にルルーシュに挨拶をする兄姉にルルーシュは混乱の極みである。
まるで今日もただの日常です、とでも言うかのような普通さで、アリエス離宮までキラとレンに手を引かれて帰還した。此処にきてやっと経緯を思い返す余裕をもてたルルーシュは頭を抱えた。


こんな、自分なんかを庇うために、二人も皇帝に楯突いたのだ。しかも、あんなあからさまな・・・・!

 


「お二人とも、ご自分が何をしたかお分かりですか?!何てこと、こんな」



「大丈夫♪」



服の裾を掴んで縋りつくルルーシュを撫でながらキラが明るく答える。レンも屈んでルルーシュの視線に合わせて口を開いた。

 


「心配要りませんよ。私達は自分の身くらいどうにかしますし、貴方達二人の事も勿論守りますからね。」


「・・・・なにを、いって」

 


自分の身は、自分で守らなければ、と決意したばかりだというのに、そんな事をそんな風に言われると縋ってしまいたくなる。揺れる視界を誤魔化すように、目の前の深紅の瞳から床へと視線を移した。俯いたルルーシュの頭を、横からキラが撫でる。

 
 

「大体、さっきの言葉は前々から言いたかったことだし。丁度良い機会だから、君の抗議に便乗させてもらっただけだよ。 だから、ルルーシュが気にする必要ないって!」



「そんな、」

 


ルルーシュが気にせずに良い様にキラが冗談めかして言うが、普通ならばその場で首を切られても可笑しくなかった。額面どおりにとってしまえるわけがない。だがそんなルルーシュの内心などお見通しなのだろう。仕方無さそうに苦笑しながら、優しく二人は言う。



「過ぎたことは過ぎたこと、ということで、旅立つ準備をしましょうか。向こうではよろしくお願いしますね。」


「そうだね。僕らも日本は初めてだなあ。ルルーシュもだよね?一緒に頑張ろうね!」

 


まるで旅行にでも行くような気軽な言葉で言われてしまえば、深刻な台詞など返せないではないか。いつの間にか落ち着いてしまった心境に複雑になりながら、おずおずとキラとレンを見上げて、ルルーシュが笑った。



「・・・よろしく、お願いします。キラ兄さん、レン姉さん。」


「「よろしく、ルルーシュ?」」


「はい!」



ならば、と少しだけ砕けた口調でキラとレンを呼べば、二人も嬉しそうに笑って名前で呼んでくれる。その声が本当に自分への優しさだけが込められたものだったから、元気よく返事をして心から笑えた。
 

昨夜母が殺されたと知り、ナナリーの足と目が奪われたと知った時の絶望は何処にも無かった。
本当にキラとレンが居れば、どうにかなる気がしてしまう。


そんなルルーシュの笑顔に、更に優しく笑いかけてくれる二人の顔を見あげて、・・・・涙がこぼれた。


ナナリーを守らなければ、という兄としての義務と責任感ゆえに、まだ一度も泣けなかった自分に、その時気づいた。素直に、母を思って泣くことを許してくれる、二人の存在が此処にあることが何よりも嬉しかった。

 



(大丈夫。大丈夫。・・・二人が一緒なら、)

 


そう思えることが、何よりも。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「マリアンヌ・・・・」


「仕方がないわよ。シャルル。大丈夫、計画が成功すれば、あの子達もわかってくれるわ」



薄暗い部屋に、弱弱しい皇帝の声が響く。他者の居る前では決して見せない姿を、唯一あるがまま受け入れてくれた愛しい女・・の魂を宿す少女を見つめた。幼い少女の身体に、己が心を他者に乗り移らせるギアスで死ぬ間際に精神だけを逃した妻が、肩を竦めて笑う。幼い顔立ちに、成熟した女性としての表情。そんなアンバランスさも、マリアンヌの心だけでも無事だったという安堵の前には些細な問題だった。
他者の心を無理矢理受け入れさせられた少女が、どのような苦しみを背負うか、なんて気遣いは微塵も浮かばなかった。ただ妻への愛しさだけに突き動かされて、少女の身体をかき抱く。

 
 

「だが・・・」


「もう!心配性ね!ラグナロクの接続までの辛抱よ。
 それにルルーシュは私の息子よ?簡単に死んだりしないわ」


「そう、だな」


「だから、貴方は少し休みなさい。眠るまできちんと傍に居るわ」


「ああ・・・」

 


膝の上に頭を乗せて、豊かな髪をマリアンヌが撫でる。直ぐに寝入った夫の顔を見下ろして、愛しげに微笑んだ。
背後に歩み寄った気配には視線も向けずに言葉だけをそっと投げる。大きな声で話したら、折角休んでいるシャルルが起きてしまう。

 


「貴方のほうは良いの?ユイ」


「ま、仕方ないわね。今は誤解してるみたいだけど、きっと計画が成功したら理解してくれるわ。」


「キラもレンも頑固だもんね。貴方にそっくり」


「それをマリアンヌにだけは言われたくないわ」

 


濃い栗色の髪を短く切りそろえた小柄な女性が、白衣姿で資料を抱えてマリアンヌ歩み寄る。ユイと呼ばれたその女性は、マリアンヌの傍らに抱えた資料を静かにおくと肩を竦めて苦笑した。自分が産み落とした子供が、開戦予定国に人身御供に送られると知っていながら何の焦りも見せない。
自分たちの計画の一端を知りながら、公衆の面前で皇帝へ楯突く、などという派手なパフォーマンスを行ったのは、単に親に指図されたくない子供の反抗、程度にしかとっていない。キラとレンが、本気で母親であるユイに逆らったり、ユイの理想に反対するなど考えても居ないようだ。それは、マリアンヌも同様だったが。


どちらも、己の正しさを確信して、自分たちを理解しない人間が存在するなんて微塵も考えていない独善的なところが良く似た親友同士だった。

 


「けど、謁見の間でシャルルにあんな事を言うのはいただけないわ」



少し不機嫌そうにマリアンヌがこぼせば

 


「そうね、流石にアレは言いすぎねぇ。ごめんなさいね。」


「別にユイが悪いわけじゃないけど・・・お仕置きは、するわよ?」


「仕方ないわ。でも多少は手加減してあげて頂戴。キラもレンも、私には可愛い子供たちなのよ」


「わかってるわ。ちょっとお灸を据えるだけだから」

 


申し訳無さそうにユイが答える。表情だけ見れば優しげな母親のようだが、言葉の内容はやはり何処までも勝手なものだった。

 


「む・・・」


「「あら」」



そこで、寝入っていたシャルルが少し眉間に皺を寄せた。気づいた女性二人が口を押さえて様子を窺う。
だが寝返りを打つと再び静かになった。

 


「・・・・ごめんなさい。私はそろそろ戻るわね。」


「ええ、じゃあ、私はしばらくここで休むから。ギアスの調整は後でお願い。」


「了解。何かあったら教団に連絡して頂戴」


「はぁい。ユイも無理しないでね」


「お互い様よ。その体、まだ馴染んでないんだから、気をつけなさいマリアンヌ」


「はいはい。じゃあね」


「ええ、また」

 


そっと囁きあった女性二人の会話もそこで途切れた。

残るのは、ブリタニア皇帝としての仮面を脱いで、安心しきった表情で眠るシャルルの寝息と、そんな夫をいとおしげに見つめる、行儀見習いであったアーニャという幼い少女の身体を奪った、元皇妃マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの身じろぐ音だけ。
 

優しい口調と美しい微笑で交わされた、人類史上類を見ない独善的で傲慢な計画。

その詳細を知る者は、まだ仲間内にしか存在しなかったある日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


***






という感じの思いつき小話

この話ではキラもレンも、ユイさんとシャルルの間に生まれた皇子と皇女。
ユイは教団の研究者兼皇妃。でもシャルルとは政治的な立場での協力者としての感情しかないです。

キラとレンはユイの行動を怪しんで、芋づる式に皇帝の動向の怪しさに着目。
元々ブリタニアのあり方も気に入らないし、いつか反逆か革命でも起こそうと準備中でした。

で、ルルーシュの謁見に居合わせて、幾らなんでも、なシャルルの言葉にプッツンしてその場で抗議反論。ついでに良い機会だし一緒に日本に行っちゃえば良いか。的な乗りで態と自分たちを切り捨てさせましたと。
下手スりゃその場で斬首コースですが、殺せないのはわかってましたので。

何せユイが何か研究成果の実験でキラにもレンにも何がしかの改造施しやがったのをしってますから。直ぐには殺されないならどうにでもできる、と。日本行きは賭けでしたが、最悪でも捕縛されて拷問くらいが関の山か、したら脱走すりゃいいやと、そんな感じで堂々と言いたかったことの一端をぶちまけて見ました。な場面です。

ちなみに、レンはコーネリアとユフィの間の時期に生まれたルルと同い年の姉です。だからレンが第3、ユフィが第4と一個ずつ順番がずれます。






 

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サイトメインのクロスネタでは、当たり前のように碇レン(orシオン)だ別作品のキャラに愛されるお話中心です。皆様方のご嗜好に合わないときは、速やかにお帰りになって、このサイトの存在ごとお忘れください。
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